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パーセプションフローモデルとは?意味・作り方を具体例つきで解説

パーセプションフローモデル活用術

「自社商品の良さがなかなか顧客に伝わらない」あるいは「広告を出しても反応が薄く、次の打ち手が見えない」といった悩みを抱えていませんか。

こうした悩みの手がかりになるのが、顧客の認識の変化に着目する「パーセプションフローモデル」です。この記事では、意味や作り方を、具体例を交えて紹介します。

パーセプションフローモデルとは?

パーセプションフローモデルとは、顧客の「認識」がどう変わるかを描き、その変化に合わせてマーケティング活動を設計するフレームワークです。
パーセプションは「知覚」や「認識」を意味します。たとえば、「自分には関係ない」と考えていた顧客が、「自分に必要だ」と認識を変えて購入し、満足して他者へ勧めるまでの流れを整理します。

P&Gでブランドマネジメントに携わっていた、株式会社クー・マーケティング・カンパニー代表取締役の音部大輔氏が考案しました。

基本的な考え方

認識の変化を段階ごとに整理し、変化を促す施策と、その効果を測る指標まで、一体で設計します。施策から考えるのではなく、顧客にどう認識してもらいたいかを起点にする点が、考え方の軸です。
目指すのは、顧客の認識が自発的に変わり、ブランド体験を通した満足につながる状態です。

認識の変化と市場創造

認識の変化は、市場の創造にもつながります。
顧客にとって「いい商品」の定義が変わると、重視される条件の順位が入れ替わり、新しい市場が生まれるためです。たとえば自動車は、高級感や静粛性から、室内の広さ、低燃費、電動化へと、求められる条件が移ってきました。この入れ替わりを「属性順位の転換」と呼び、それによる新たな市場づくりを「市場創造」といいます。

カスタマージャーニーマップとの違い

カスタマージャーニーマップが顧客の「行動」や「接点」を可視化するのに対し、パーセプションフローモデルは顧客の「認識の変化」を設計するものです。この違いは、建物の見取り図と設計図の関係にたとえると分かりやすくなります。

カスタマージャーニーマップは、顧客が現在どのように動き、どこでブランドと接しているかという「現状」を把握するための見取り図です。例えば、既存のECサイトで顧客がどこで離脱しているかを分析し、導線を改善する場合に適しています。

関連記事:カスタマージャーニー分析とは?手順と活用ポイントを解説

対してパーセプションフローモデルは、顧客にどう思ってほしいかという「未来」を描く設計図です。たとえば、単なる掃除道具と考えていた家電に対し、「自由な時間を生み出す存在」という新しい認識を持ってもらい、未開拓の市場を創造したい場合に向いています。
既存の施策の改善か、新たな認識の構築かという目的によって、使い分けられます。

パーセプションフローモデルの構成

パーセプションフローモデルは、縦軸に顧客の状態を示す「段階」、横軸に各段階で整理する「5つの要素」を置いた表で表します。考案者が示す標準的な図は空欄で、段階の数も含めて、対象の商品やサービスに合わせて自由に書き込みます。

【縦軸】顧客の状態を示す段階

縦軸には、顧客が購入に至り、さらに他者へ勧めるまでの状態を、段階として並べます。
標準的な例は、次の8段階です。

現状 → 認知 → 興味 → 購入 → 使用 → 満足 → 再購入 → 口コミ

最初の「現状」は、競合の商品を使っているなどして、他の機会や解決すべき問題をまだ認識していない状態です。次の「認知」は、商品やブランドを知ることではなく、そうした機会や問題を認識した状態を指します。

段階を並べることで、顧客が今どの状態にいるのか、次の段階へ進むために何が必要なのかを整理できます。

【横軸】各段階で整理する5つの要素

横軸には、各段階における顧客の状態と、企業が行う施策、その効果を、5つの要素として並べます。

  • 行動・態度:各段階で顧客がとる行動や態度
  • パーセプション(認識):各段階で顧客が抱いている認識
  • 知覚刺激:顧客の認識を次の段階へ動かすために届ける、提案や情報提供の内容。「何を伝えるか」にあたります
  • KPI:各段階で設定する数値目標。媒体の露出量や、認識の変化の度合い(%)などが該当します
  • メディア・媒体:知覚刺激を届ける手段や接点。「どこで伝えるか」にあたります

5つの要素を段階に沿って整理すると、顧客の認識の変化に合わせた施策を設計し、その効果を評価できるようになります。

パーセプションフローモデルの3つのメリット

パーセプションフローモデルをマーケティング戦略に導入すると、単に顧客理解を深めるだけでなく、組織全体にも効果が広がります。顧客の認識の変化を軸に戦略を設計することで、一貫性のある施策展開が可能になり、チームの連携も進めやすくなります。

顧客の認識を深く理解できる

顧客の行動の背景にある「なぜ」を、認識の変化として理解できます。
商品を知ってから購入し、他者へ勧めるまでの間に、顧客の認識がどう変わるのかを段階ごとに整理するため、認識が変わるきっかけや、その途中にある心理的なハードルが見えます。顧客が求めている情報や体験を捉えられるため、伝わりやすいコミュニケーションを設計できます。

施策に一貫性が生まれる

広告、PR、SNS、営業、カスタマーサポートなど、部署ごとに分かれがちな施策を、同じ方向にそろえられます。パーセプションフローモデルがマーケティング活動全体の設計図になり、すべての施策が「顧客の認識をどう変えるか」という共通の目的で結ばれるためです。どの接点でも同じメッセージを届けられるため、統一感のあるブランド体験を提供できます。

組織の共通言語になる

営業、開発、経営層まで、組織全体で顧客理解をそろえる共通言語になります。
「ターゲット顧客は、今この段階で、このような認識を持っている」という共通認識があると、部門間の連携を進めやすくなり、顧客を起点にした意思決定につながります。

パーセプションフローモデルの作り方:5ステップ

パーセプションフローモデルは、購入の段階で目指す認識から逆算して作成します。
ここでは、5つのステップに分けて、作り方を紹介します。

ステップ1:目的とゴールを定める

最初に、このモデルで何を達成したいのかを定めます。
誰の、どの認識を、どのように変え、その結果どうなりたいのかを明確にします。「売上を上げる」といった曖昧な目標ではなく、20代女性の「このブランドは自分向けではない」という認識を、「自分らしいスタイルを表現できるブランドだ」に変え、新規購入率の向上を目指す、のように設定します。
あわせて、ブランドの位置づけや競合の状況といった戦略も整理します。

ステップ2:ターゲット顧客を設定する

次に、誰の認識の変化を描くのか、ターゲット顧客像を具体的に設定します。
年齢、性別、職業といったデモグラフィック情報だけでなく、価値観、ライフスタイル、情報収集の仕方といったサイコグラフィック情報まで掘り下げたペルソナを作成します。
ターゲットが具体的であるほど、後のステップで設定する認識や知覚刺激の解像度も高まります。

ステップ3:各段階の認識を洗い出す

標準の8段階を基に、対象の商品に合わせて段階を調整し、各段階で顧客が抱いている現在の認識と、企業として目指す認識を言語化します。まず、現状の認識と、購入の段階で目指す認識を置きます。次に、満足・再購入・発信につながる動機を設定し、最後に、その間の段階の認識を、順を追って埋めていきます。企業側の思い込みではなく、顧客アンケートやインタビュー、SNSの投稿などを参考に、顧客の実際の声に基づいて洗い出します。

ステップ4:知覚刺激とメディアを設計する

洗い出した現在の認識を、目指す認識へ動かすために、何を伝えるのかを考えます。これが知覚刺激です。広告のメッセージ、記事の内容、キャンペーンの企画、店頭での体験の設計、営業担当者の提案内容などが該当します。知覚刺激の内容が決まると、それを届けるメディア・媒体も定まります。

ステップ5:KPIを設定する

最後に、各段階のKPI(数値目標)を設定します。たとえば、「興味」の段階では、特定ページの閲覧数や滞在時間、動画の視聴完了率のほか、「自分に合いそうだ」と答えた人の割合などが指標になります。「満足」の段階では、NPSやレビューの評価点などが使えます。

5つのステップを経て、顧客の認識を変える施策と、その効果を測る指標が、一つの設計図にまとまります。具体例で、その使われ方を見ていきます。

パーセプションフローモデルの具体例

実際のビジネスシーンでどのように活用できるのか、BtoBとBtoCの2つの具体例で紹介します。

BtoB:名刺管理サービス

名刺について、「個人の人脈であり、自分で管理するもの」という認識を持つビジネスパーソンを想定します。この認識を「名刺は会社全体で共有・活用できる資産」へと変えることを目指し、名刺情報の共有による営業活動への活用を訴求します。

知覚刺激には、上司が部下の名刺情報にアクセスできず、営業機会を逃してしまう様子を描いたテレビCMや、名刺情報の共有による効果・活用方法を紹介するWebセミナーなどが考えられます。

KPIは、認知から導入までの段階に応じて、広告のクリック数、資料請求数、商談数、受注数などを設定します。導入後は、利用状況、顧客満足度、契約更新率などを指標とし、継続利用や他社への推奨に関する施策も検討します。

このような顧客の認識や行動の変化、知覚刺激、KPI、メディア・媒体を標準の8段階に沿って整理したものが、パーセプションフローモデルです。名刺管理サービスを例に、全体像を図にまとめると以下のようになります。

BtoC:冷凍食品

冷凍食品に対して、「手抜きで、罪悪感がある」というネガティブな認識を持つ消費者を想定します。こうした認識を「手軽においしく食べられる、賢い選択」へと変えることを目指し、冷凍食品のおいしさや手軽さを訴求します。

知覚刺激には、食卓で餃子を焼く楽しさやおいしさを描いたCMや、冷凍食品を使ったアレンジレシピのSNS発信などが考えられます。

KPIは、広告のクリック数や動画の視聴数、商品ページの閲覧数、購入数などが考えられます。購入後も、リピート購入率や顧客満足度などを指標とし、継続購入や他者への推奨につながる施策を検討します。

冷凍食品についても、同様に標準の8段階と5つの構成要素を整理することで、認識の変化に合わせた施策やKPIの設計を具体的にイメージできます。

パーセプションフローモデルの運用方法

パーセプションフローモデルは、一度作成して終わりではありません。
市場や顧客の変化に合わせて定期的に見直し、KPIで施策の効果を測りながら改善を重ねることで、モデルの精度が高まります。

KPIの見直し

各段階のKPIを定期的に確認し、目標を下回った場合は、原因を切り分けます。行動のKPI(クリック数など)と認識のKPI(アンケートで「自分に合いそうだ」と答えた人の割合など)を並べて見ると、見直す箇所が分かります。

行動のKPI認識のKPI見直す箇所見直しの例
高い低い伝える内容(知覚刺激)メッセージを書き換える
低い高い届ける場所(メディア・媒体)購入につながる接点を増やす

定例会議での活用

定例会議などでモデルを参照すると、「今、顧客のどの段階の、どの認識を変えようとしているのか」を、メンバー全員で確認しながら施策を見直せます。たとえば、広告チームと営業チームが「興味」の段階の顧客への働きかけを調整したり、商品開発チームが「満足」の段階の顧客の声を製品改善に活かしたりと、部門をまたいだ見直しがしやすくなります。

よくある質問

Q. パーセプションフローモデルを作成するうえで、重要なポイントは何ですか?

顧客視点を持つことです。
企業側の「こう思ってほしい」という願望だけを並べるのではなく、顧客インタビューやアンケートを通じて、「顧客が実際にどう認識しているか」という事実を起点に考えます。実際の顧客理解が、実効性のあるモデルの土台になります。

Q. パーセプションフローモデルは、BtoBでも活用できますか?

BtoBでも活用できます。
BtoBの購買でも、判断するのは人であり、担当者や決裁者といった役割や状況によって、「いい商品」の基準が変わるためです。たとえば、現場の担当者は使いやすさを、決裁者は費用対効果を重視する、といった違いがあります。役割ごとの認識の変化を整理すると、施策を設計しやすくなります。

Q. パーセプションフローモデルのテンプレートはありますか?

クー・マーケティング・カンパニーの「パーセプションフロー・モデル概説」のページで、空欄の標準テンプレートが公開されています。段階の数も含めて、対象の商品やサービスに合わせて書き込めます。

まとめ

パーセプションフローモデルは、行動ではなく顧客の「認識」の変化を軸に、顧客に届く施策とKPIを設計するフレームワークです。要点は次の3つです。

  • 構成:縦軸の段階と、横軸の5つの要素で整理する
  • メリット:顧客の認識を理解でき、施策に一貫性が生まれ、組織の共通言語になる
  • 作り方:目的とターゲットを決め、各段階の認識、知覚刺激とメディア、KPIの順に設計する

まずは、変えたい認識を一つ決めるところから、自社のモデルづくりを始められます。

営業チームの一員として、ターゲット選定から継続的なフォローまでを担う、
伴走型インサイドセールス「SABU(サブ)」をご紹介します。

参考文献

・株式会社クー・マーケティング・カンパニー「パーセプションフロー・モデル概説」(2020年)

・NEC wisdom「『認識』の変化で『市場』を創造する ~多様化時代の勝ち筋を創るマーケティングの新手法とは~」(2022年)